暴露量でスプレッダ化する仮説は恐ろしい
3月8日に新型コロナに関して、山中伸弥氏(京大iPS細胞研所長)と尾身茂氏(新型コロナ 専門家会議 副座長)との対談の動画が上がっていました。
その中で、気になる部分があったので抜粋します。
山中先生:人にうつさない4人とうつす1人と、これ、何がちがうのでしょうか?
尾身先生:……その1人の特徴は何かということは、まだ、はっきりわかっていません。仮説があるだけです。……仮説はどうも、ウィルス側の要素ではなくて、ホスト側の要素で……ウィルスの暴露量が多いと当然、増殖する量も増えるので……あとは免疫のことも関係するか……そうゆう事が今考えられています。
対談の中ではスーパースプレッダという言葉は使われていませんでしたが、おそらくそのことを指していると思います。自分の中で、ある程度納得できる説としては、スプレッダから感染を受けるときに、暴露量が少ないと、ウィルスの増殖に対して、免疫系が追いつくことができて、スプレッダ化しない。暴露量が多いと、免疫系が追いつかないまま、ウィルスが増殖して、高濃度のウイルスを保有するようなスプレッダ化するという説が一つ考えられます。
この暴露量が多いとスプレッダ化する説を考えた場合、何が非常に恐ろしいと感じたかというと、暴露が重なる条件で、スプレッダの増加率が非線形に増加する可能性あるところです。
これを説明するのに、次の簡単なモデルにて、計算を行ってみました。
<条件>
接触の回数はポアソン分布に従うとして、λ=0.43,0.86,1.29としてます。これはλ=0.43の時にスプレッダ:非スプレッダの割合を1:4にするためです。また、接触の平均回数であるλはその場に元のスプレッダがいる人数に比例するとして、λ=0.43の時に元スプレッダを1人としています。ポアソン分布を計算すると、接触回数に応じて確率が出てくるので、λ=0.43のときの新スプレッダが1人になるよう、全体の人数を14.3人に調整しています。
元スプレッダ 1人 の場合は 新スプレッダ 1人ですが、2倍の元スプレッダ 2人 の場合は 新スプレッダ 3.1人と新スプレッダが2倍以上(非線形)に増えています。通常、感染者の増加率は感染者数に比例する(もしくは比例より小さい)と思いますが、今回の仮定においては全く異なる挙動となっています。
これは、少数のスプレッダが各地に散発的な小さなクラスタを形成する状況とは違い、同一コミュニティ内でスプレッダの自己増殖が起こることで、急激に大きなクラスタを形成する危険性があります。例えば、クルーズ船やライブハウス、宗教施設などでそれが起きた可能性は否定できません。
また、接触回数は、スプレッダの数だけでなく、時間が長ければ大きくなるので、どの場所でも起きる可能性はあり、特に病院や介護施設などのリスクは大きいと考えられます。
ただ、対策としては、現状と変わらず、あらかじめ自己増殖が大きくなる可能性が高い集会をやめることや、大きくなる前の初期のクラスタを早期に発見することが重要だと思います。
この仮説自体は、なかなか検証するのは難しいと思うので、もっと後でわかってくるものかもしれません。なので、一般的にいえば「まだまだ未知のウイルスなので、油断すると一気に広がって手が付けられなくなるから気を付けて」という心構えが大事かと思います。